ダークウェブでは、アクセス元・アクセス先のお互いが匿名性を保つ形で、情報のやり取りを行うことができます。
この特徴を生かし、ダークウェブは、犯罪行為が行われる場となっています。
ダークウェブでは、法律に反する取引を行うサイトがあり、過去にはSilkroadやHydra Marketなど、大規模なサイトになったものもあります。
Five Eyesといわれる国々は、この様な違法取引がダークウェブ上で行われていることを野放しにしていたわけではありません。
ここでは、Five Eyesがダークウェブ上の違法サイトをどの様に取り締まっているのか、過去の活動とその成果をお伝えします。
ダークウェブそのものについて知りたい方は「ダークウェブの入り方 - 誕生の背景・階層の違い・Torを使ったアクセス方法まで徹底解説!」をご確認ください。
Five Eyes(ファイブ・アイズ)
Five Eyes(ファイブ・アイズ)とは、アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドにより構成されている「国家の枠組みを超えた機密情報共有の枠組み」です。
70年以上にも渡り続いていますが、活動内容が明らかになったのは、ここ10年ほどのこと。
詳細は「ファイブ・アイズ(Five Eyes) - 世界最強のインテリジェンス協定」に記載していますので、もしよければご確認ください。
ファイブ・アイズは、お互いに連携して取り締まりを行っており、ダークウェブに関しても例外ではありません。
過去にダークウェブで行われた取り締まりは、主にFive Eyes Law Enforcement Group(FELEG)の指揮のもと行われました。
Five Eyes Law Enforcement Group
Five Eyes Law Enforcement Group(略称:FELEG)とは、ファイブ・アイズ加盟国による犯罪と戦うための取り組みです。
この取り組みにより、ファイブ・アイズ加盟国はお互いの国の犯罪情報を共有し、各国の警察機関と強調して取り締まりを行います。
FELEGとして各国が連携して動いた作戦には、Operation HyperionやOperation SpecTorがあります。
また、FELEGとして動いてはいないものの、FBIやEuropolが合同で動いた作戦として有名なものとしてはOperation Onymousがあります(Operation Onymousの詳細は後述)。
Five Eyes + 日本の可能性
国際的な協業の枠組みには、Five Eyes以外にも、Five Eyes Plus 3、Nine Eyesなど、日本を含む他の国々と結ばれた協定が存在します。
それら協定の根本には、Five Eyesがありますが、今後、日本はその根本の協定「Five Eyes」の仲間入りを果たす可能性が報じられています。
これは、中国やロシアなどの脅威に対抗するため、日本とFive Eyesの利害が一致した結果といえるでしょう。また、第二次世界大戦以降の日本におけるFive Eyesへの貢献度合いも関係するでしょう。
今後の進展から目が離せません。
Five Eyesによる大規模な取り締まり活動(Operation Onymous,Hyperion, SpecTor)
FELEGの取り組みは、2006年から始まりました。
その取り組みの中で、ダークウェブをターゲットにした有名なものは以下の3つとなります:
- Operation Onymous(オペレーション・オニマス)
- Operation Hyperion(オペレーション・ハイペリオン)
- Operation SpecTor(オペレーション・スペクター)
以降でそれぞれを詳しく説明します。
Operation Onymous(オペレーション・オニマス)
Operation Onymous(オペレーション・オニマス)は、FBI、DEA(アメリカ麻薬取締局)やEuropolを中心に、17カ国の警察により行われた2014年11月5日~6日にかけて実施された合同法執行作戦。厳密には、FELEGとしての動きではありませんでしたが、ダークウェブを取り締まるための大規模作戦であるため、取り上げました。
オペレーション・オニマスにより、Silk Road 2.0、Cloud 9やHydraといった大規模な違法ダークウェブサイトが閉鎖に追いやられました。捜査対象のサイトには、密輸品の売買、マネーロンダリングを行うためのサイトも入っていました。
詳細は、Wikipediaをご確認ください(英語)。
Operation Hyperion(オペレーション・ハイペリオン)
Operation Hyperion(オペレーション・ハイペリオン)は、FELEGにより行われた合同作戦。
オペレーション・ハイペリオンは、ダークウェブのサイト運営者に加え、そのユーザも対象とした初めての作戦でした。実際に、FBIやFELEGに所属する警察は、ダークウェブで違法な取引を行っているユーザ150人以上に対して、直接連絡を取りました。
このオペレーション内では、連絡した対象の人々を逮捕することはしませんでした。これは、ダークウェブのユーザは警察に見張られている、という印象を与えるためだったといわれています。
Operation SpecTor(オペレーション・スペクター)
2023年5月に実施されたOperation SpecTor(オペレーション・スペクター)。
オペレーション・スペクターは、3つの大陸(9カ国)にまたがり、実施されました。
また、アメリカ、ヨーロッパ、南アメリカからFBIを含む、多くの警察組織が参加しました。
その結果、何百万ドルもの大金を差し押さえ、多くの麻薬が世間に出回ることを直前に阻止することに成功。
FBIは、以下の様に、YouTubeにもオペレーション・スペクターの成果をアップしています。また、FBIのサイトでも、その成果を説明しています。
ダークウェブには、地理的な制限がないため、国をまたいだ一斉取り締まりが効果的であることが、近年の取り締まりで分かってきました。ダークウェブで活動する人は、年々、増加傾向にあるため、今後も大陸をまたいだ大規模な捜査は継続して行われると思われます。
閉鎖に追いやられた有名なダークウェブサイト
国際的な取り締まり活動により、閉鎖に追いやられた有名なダークウェブサイトは数多く存在します。
- Silk Road(シルクロード)
- Agora(アゴーラ)
- Alphabay(アルファベイ)
- DarkMarket(ダークマーケット)
- Hydra(ハイドラ)
最初に、FBIによりSilk Roadが閉鎖され、その後、国際的な連携により、多くのダークウェブサイトが閉鎖に追いやられていきました。
閉鎖されたダークウェブサイトや稼働時のスクリーンショットなど、更なる詳細は「ダークウェブの入り方 - 誕生の背景・階層の違い・Torを使ったアクセス方法まで徹底解説!」で説明しています。興味のある方はご確認ください。
旬のダークウェブサイトはTor2Door
今、旬のダークウェブサイトは「Tor2Door」。
Tor2Doorは、これまでのダークウェブサイトと同様に、ダークウェブ上で違法な取引ができるサイトでした。
2020年1月に誕生したTor2Doorは、ダークウェブ界隈では有名なサイトとして2023年9月まで稼働していました。
しかし、そのサイトが9月14日頃から接続できなくなりました・・・。
Tor2Doorを使用した「販売側も」「購入側も」多額のビットコインをTor2Doorに預けていた状態のため、ユーザ資産の持ち逃げ詐欺では、といわれています。
また、本記事で紹介している様な合同作戦により、サイトが急に閉鎖に追い込まれた可能性を指摘する声もあります。
ダークウェブを閉鎖する動きは止まらないが、Torの使用は合法
これまでに違法な活動が行われてきたダークウェブサイトは、取り締まりの対象となってきました。
実際に、ある程度成長したダークウェブサイトは、必ず警察に特定され、閉鎖に追いやられています。
今後は、更に国際連携が進み、定期的に取り締まりが行われるものと思われます。
しかし、ダークウェブ時代の匿名性が破られた証拠は現時点ではありません。
インターネット上で匿名性を維持するため、ダークウェブやTorといった技術はこれからも利用されていくでしょう(匿名性が破られていれば、その技術を使って悪いことをしようとする人はいないはずです)。
ダークウェブやダークウェブを構成するTorネットワークといった技術そのものに、違法性はありません。
そのため、匿名性を維持する目的でTorを使用することはこれからも可能です。
ただし、いつばれるか分からないので、誰も見ていないからといって、ダークウェブで怪しいことを試みることはやめておきましょう。
以上です。