
TorとVPNは、どちらも匿名でインターネットに接続するための技術です。
この2つを組み合わせたTor over VPN(onion over vpn、オニオン・オーバーVPN)は、「VPN」を経由して「Torネットワーク」に接続するためのものです。NordVPNなどのVPNソフトウェアの一機能として提供されています。Tor Over VPNのメリットは第一に「セキュリティ」ですが、それ以外にもメリットはあります。
本記事では「Tor Over VPN」のメリットと「あまり知られていない使い方」を分かりやすく説明します。
当サイトには、TorやVPNと関連する記事が他にもございます。関連する記事を以下に示しますので、興味のある方はご確認ください:
- 「ダークウェブ - 闇のベールに包まれた漆黒エリアの歩き方」は、ダークウェブについて知りたい方向けの記事となっています。世界最大のダークウェブはTorネットワーク内に構築されています。
- 「Torとは?最強の匿名化ツールを徹底解説」は、Torってそもそも何?という方向けの記事となっています。Torネットワークが作成された背景から仕組みまでを説明しています。
- 「匿名性重視の「Torブラウザ」:ダウンロード~使い方まで」は、Torネットワークを通してインターネットにアクセスする方法やダークウェブにアクセスする方法について説明しています。
ココがポイント
- Torプラスアルファの匿名化
- Torブラウザ以外のブラウザ(Chrome、Firefoxなど)でTorネットワークに接続できる(NordVPN限定の機能)
本記事は「NordVPN 」のTor Over VPN機能を使用する前提で記載しています。NordVPNの詳細は「激熱VPN:Nord VPNがオススメな理由を語り尽くします」をご確認ください。
Tor Over VPN(オニオン・オーバーVPN)の仕組み
Tor Over VPNは、オニオン・オーバーVPN(Onion Over VPN)やTor through VPNと呼ばれています。ここでは、その仕組みについて説明します。
Tor Over VPNの特徴は接続順にあり
Tor Over VPNの特徴は、インターネットに出るまでの接続順にあります。

Tor Over VPNでインターネットへ出るまでの接続経路
1.VPNに接続
2.Torネットワークに接続
3.Torネットワークを経由してインターネットに接続
詳細を経路ごとにみていきましょう。
1.VPNに接続
Tor Over VPNでは、まずVPNサーバに接続します。
VPNサーバ経由でTorネットワークに接続することにより、TorネットワークからはVPNサーバからアクセスがきていることが分かります。逆に、接続元の「ISP(NTT Communicationsやビッグローブなど)」や「IPアドレスの情報」などは接続先のサーバ(Torネットワーク上のサーバ)には分からず、匿名の状態が保てます。
2.Torネットワークに接続
VPNサーバに接続した後は、VPNサーバからTorネットワークに接続します。NordVPNの様に、Tor接続専用のサーバを用意しているVPNプロバイダもいます。
3.Torネットワークを経由してインターネットに接続
VPNサーバ→Torネットワークに接続した後、インターネットに接続します。また、Torネットワーク内にあるダークウェブにも接続できます。
通常のVPN接続との違い
Tor Over VPNと通常のVPN接続は「Toネットワークを使用している」という点以外にも2点大きな違いがあります。
ISPからは、VPN接続している様に見える
ISPからは、TorネットワークではなくVPNサーバに接続している様に見えます。検閲国家(報道の自由のない国)からは、Torネットワークに直接接続できないことがあります。VPNを経由すれば、直接Torネットワークへの接続がブロックされる場合でも、接続できる様になります。
Torネットワークを経由してインターネット接続
VPNを使用すると、VPNサーバ経由でインターネットに接続します。しかし、Tor Over VPNを使用すると、VPNサーバ→Torネットワークを経由して、インターネットに接続します。これにより、接続元をVPNで隠すことができます。また、接続先に対しても、Torネットワークからきていること以外は分からなくなります。これにより、高い匿名性を維持した状態で、インターネットに接続できる様になります。
通常のTor接続との違い
VPNを経由してTorネットワークにアクセスすると、直接Torネットワークにアクセスするよりも、セキュリティが向上します。これは、VPNサーバ側で、セキュリティを考慮して、Torネットワークに接続してくれるためです。Torブラウザで直接Torネットワークに接続する場合、Torブラウザの設定を変更してからでないと危険です。
特にTorネットワーク内のダークウェブにアクセスする場合、「JavaScriptの設定をOFFにする」など、Torブラウザのセキュリティを高めた上で接続しないと危険です。こういった最低限の設定は、VPNサーバ側で実施した上でTorネットワークに接続できるため、セキュリティを確保した上で、Torネットワークに接続できます。
しかし、VPNサーバの設定も完璧ではないため、アンチウィルスソフトの導入など必要な対応は行った上で、Torネットワークやダークウェブに接続する様にしましょう。アンチウィルスソフトのオススメは、ダークウェブモニタリング機能の付いた「世界で一番売れているーノートン 」です。
Tor Over VPN(オニオン・オーバーVPN)のメリット
Tor Over VPNの最も分かりやすいメリットは2点。
- インターネット接続時の匿名性を高めることができる点
- ChromeやFirefoxで、Torネットワークやダークウェブにアクセスできる点 ※NordVPN限定の機能
Tor Over VPNを使用すると、インターネット接続時の匿名性が高まります。
また、NordVPN 限定の機能となりますが、Torブラウザ以外のブラウザを使い、Torネットワークやダークウェブにアクセスできる様になります。
Torプラスアルファの匿名化
Torネットワークを経由してインターネットに接続すると、Torネットワーク内にある3台のサーバを経由します。この時、最初のサーバが悪者に監視されていると、接続元のISPや接続元のIPアドレスが悪者に分かってしまいます。
しかし、Tor Over VPNを使用すると、VPNサーバからTorネットワークへ接続するため、悪者に監視されているサーバであっても、こちらのISPや接続元のIPアドレスも分かりません(VPNサーバのIPアドレスということしか分かりません)。
これにより、誰がどこからアクセスしたかTorのサーバ運営側にも分からなくなり、Torネットワークだけを使用した時以上の匿名化を実現できます。
ChromeやFirefoxでTorネットワークに接続
Tor Over VPN(オニオン・オーバーVPN)の最も分かりやすいメリットは、ChromeやFirefoxからTorネットワークやダークウェブにアクセスできること。
通常、Torネットワーク経由でインターネットやダークウェブにアクセスするには、Torブラウザが必要です。しかし、Tor Over VPNを使用すれば、ChromeやFirefoxからアクセスできる様になります。
以下は、NordVPNのTor Over VPNを有効にして、ChromeからTor公式サイトにアクセスした結果です。TorチェックがOKになっていることが「This browser is configured to use Tor」のメッセージから分かります。

(接続できるよ、とあります)
Torブラウザの不具合に左右されない
Tor Over VPNを使用すると、VPNサーバからTorネットワークに接続するため、Torブラウザの不具合に悩まされなくなります。Torブラウザは、2022年9月現在も不具合により、Windows 10で64bit版が動作しません(涙)。
この事象は少なくとも2021年12月から確認しており、いつ改修されるかも分かっていません…。Torブラウザは、オープンソースで開発されているため、開発コミュニティの優先度により、不具合の改修が後回しになっている可能性があります。
こういった問題もTor Over VPNを使用すれば、「いつものブラウザ」でTorネットワークに接続できる様になるため、解消できます。
Firefoxを利用する場合は別途設定が必要
Firefoxでダークウェブにアクセスする場合は、設定を変更しないと、ダークウェブのサイト(onionドメイン)にアクセスできません。設定を変更する方法は簡単です:
1.Firefoxを起動
2.URL入力欄に「about:config」と入力
3.以下の通り、「Proceed with Caution」画面が表示されるため、画面下部の「Accept the Risk and Continue」ボタンを選択

4.検索ボックスに「network.dns.blockDotOnion」と入力
5.値を「false」に設定。画面の右下から2つ目のボタン(⇔の様なボタン)で値を切替

Tor Over VPN(オニオン・オーバーVPN)のデメリット
Tor Over VPNには、デメリットもあります。
- 通信速度がVPNよりも遅くなる
- 経由するVPNサーバによりTorに接続できない場合もある
通信速度がVPNよりも遅くなる
Tor Over VPNを使用すると、VPN→Torネットワークを経由してインターネットに接続するため、通常の回線やVPN単体よりも、接続速度が遅くなります。そのため、Tor Over VPNは「動画などのストリーミングコンテンツ」を楽しみたい場合には向いていません。
インターネットの記事やネットサーフィンには十分に耐えうる速度が出るので、場合により「VPN単体」か「Tor Over VPN」か、使い分ける様にしましょう。
接続するVPNサーバによりTorネットワークに接続できない場合もある
Tor Over VPNは、経由するVPNサーバにより、Torネットワークに接続できない場合があります。
もし、接続できない事象に遭遇した場合は、別のVPNサーバに接続しましょう。NordVPNなどの商用VPNであれば、別のVPNサーバを経由すれば接続できます。
Tor Over VPN(オニオン・オーバーVPN)を使用してTorにアクセスできるブラウザ
Tor Over VPNを使用すれば、Chrome、Firefox、Edge、Operaの4つのブラウザで、Torネットワークとダークウェブ(onionドメイン)に接続できることを確認しています(Windows 10 + NordVPNの環境で確認済)。「Firefoxを利用する場合は別途設定が必要」で説明した通り、Firefoxのみ、ダークウェブ(onionドメイン)に接続するための設定変更が必要となります。
また、メインのブラウザを使用して、ダークウェブ(onionドメイン)へアクセスすることはオススメしません。ダークウェブには、セキュリティ企業でも検知できない新種のウィルスが配布されている場合もあり、ブラウザが乗っ取られる危険性もあります。
「万が一」ブラウザが乗っ取られても問題ない様に、普段使用していないブラウザを使い、ダークウェブへ接続しましょう。念のため、SNSアカウントやメールに「ログインしていない」状態であることを確認しておきましょう。ログインできる状態だと、ウィルスが不正に怪しい投稿をしたり、怪しいメールを送信する危険性があります。
以下に、各ブラウザ毎の「Torプロジェクトのメインサイトへの確認結果」と「twitterダークウェブ版への接続結果」を示します。
Tor + Chrome→【接続可】
Tor Over VPNを有効にすれば、Chromeでは特に他の設定の必要なく、インターネットやダークウェブ(onionドメイン)に接続できます。
Chromeをメインブラウザとして使用している方も多いと思います。しかし、上記の通り、メインブラウザでダークウェブへアクセスすることはオススメしません。他のブラウザを使い「SNSや銀行サイトにログインしていない状態」で接続することをオススメします。


Tor + Firefox→【接続可】
Tor Over VPNを有効にすれば、Firefoxでも、インターネットやダークウェブ(onionドメイン)に接続できます。Firefoxでonionドメイン(ダークウェブ)に接続する場合は、追加の設定が必要になります。設定方法は上記に記載していますので、ご対応の上、ダークウェブに接続ください。


Tor + Edge→【接続可】
Tor Over VPNを有効にすれば、Microsoft Edgeでも、インターネットやダークウェブ(onionドメイン)に接続できます。


Tor + Opera→【接続可】
Tor Over VPNを有効にすれば、Operaでも、インターネットやダークウェブ(onionドメイン)に接続できます。


結論:Torネットワークへの接続にはTor Over VPN(オニオン・オーバーVPN)を使いましょう
Torネットワークに安全に接続したい場合は、Tor Over VPN(オニオン・オーバーVPN)を使いましょう。
VPNサーバである程度のセキュリティを確保してくれる上、お好みのブラウザでTorネットワークに接続できます。
最後に、Tor Over VPNのポイントを整理します。
まとめ
- ISPからはTorネットワークに接続していることが分からない
- Torプラスアルファの匿名化
- Torブラウザ以外のブラウザでTorネットワークに接続できる
- メインブラウザ以外のブラウザでTorネットワークに接続する
- 通信速度がVPN接続よりも遅くなる
- 経由するVPNサーバにより、Torネットワークに接続できない場合もある
VPNでオススメの製品は「NordVPN
」です。4つのブラウザでTorネットワークに接続できることも確認できています。
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2年間のプランで月額$3.39(約540円)以上です。