DuckDuckGoとは、今注目の検索エンジンです!
ここ数年、検索エンジン「DuckDuckGo」(ダックダックゴー)の快進撃が止まりません。
2021年1月18日には、1日1億件の検索数を突破。2022年には、自社ブラウザのベータ版(Mac)も公開。2023年には、ChatGPTからの流れで始まったAI導入の流れを受け、AI検索機能(ベータ版)を導入。また、自社ブラウザのベータ版(Windows)も6月より公開。
DuckDuckGoは、最も勢いがあり、時代の流れに乗った検索エンジンといわれています。
日本で最もアクセスの多い検索エンジンは、Google(約76%)です。それにYahoo!Japan(約15%)とBing(約8%)が続きます。Yahoo!Japanは、Googleの検索エンジンを採用しているため、シェア的にはほぼGoogleの独占状態となります。その様な状況の中、DuckDuckGoが人気を集める背景には、インターネット上でのプライバシーの扱いに注目が集まっているためです。
本記事では、 DuckDuckGoとはどんな検索エンジンか?また、DuckDuckGoが人気を集める背景やその使い方を説明します。
DuckDuckGoは、2023年3月8日、AI検索機能「DuckAssist」の実装を発表しました。詳細は本記事内のAI検索できるアツイ機能「DuckAssist」をご確認ください。
【背景】消費者のプライバシー保護に対する意識の高まり
DuckDuckGoを語る上で外せないキーワードは「プライバシー」。ここ10年にあったプライバシーに関する出来事を説明します。
スノーデンによるPRISMシステムとECHELONシステムの暴露
2013年、アメリカの国家安全保障局(NSA)が運用する、通信傍受や個人情報を収集するためのシステム「PRISM」の存在が公になります。
当時CIAに派遣されていた エドワード・スノーデン氏が大々的にPRISM(プリズム)の存在を暴露し、 GoogleやYahoo!といった大手IT企業が積極的に情報提供を行っていたことから、世界を驚かす仰天ニュースとなります。
彼が公表した情報の中には、都市伝説となっていた通信傍受システム ECHELON(エシュロン)に関する記述も確認できます。これにより、プライバシーに関する問題が身近にあることを世界中の人々が知ります。エシュロンに関する詳細は「エシュロン」 - 全世界監視プログラムの歴史と構成をご確認ください。
プリズムやエシュロンを運営しているファイブ・アイズに関しては「ファイブ・アイズ - 世界最強のインテリジェンス協定」をご確認ください。
余談ですが、スノーデン氏は現在ロシア在住。Twitterでは、積極的に情報発信しています。フォロワーには「2チャンネル」開設者の西村 博之さんもいます。
プライバシー保護の動きとGAFAM抑制の動き
AppleやGoogleなどによる「プライバシー」情報の扱い方を見てみましょう。
Appleによるプライバシー保護の動き
2021年4月にAppleが公開したプライバシーに関する資料(日本語)には、個人情報や位置情報が、スマホやタブレットといった端末からアプリや業者に連携されている現状が描かれています。そして、iPhoneではユーザの設定により、アプリや業者に提供できる情報を制限できることも説明しています。
消費者による「個人情報の扱いへの関心の高まり」に、Appleは見事に応えています。
GoogleやFacebookなどGAFAM抑制の動き
しかし、一方で、ユーザから収集した情報を「有効に」活用して、利益を上げている企業もいます。
GoogleやFacebookといった企業は、自社サイトのユーザから収集した情報を活用して、ユーザに対して「最適な」広告を提供しています。
彼らは広告から多大な収益を上げているため、積極的に情報を収集し、常に広告の精度を上げる方法を模索しています。そういった彼らの行動は、世界各国から問題視されています。
Googleでは以前から個人情報を収集しすぎ、という指摘を受けており、それに対応するため、収集した情報の保存期間を18ヵ月に設定しました。このきっかけは、2018年に欧州で施行された一般データ保護規則(GDPR)だといわれています。日経新聞の記事「Google、利用履歴の自動消去を標準に 保存は18カ月」でも取り上げられました。
また、この動きとは別に、世界ではアップルを含めた「GAFAM」に対して「プライバシー保護の懸念や市場占有率を問題視」し、デジタル市場法というものの策定が進んでいます。現在は、主に欧州が策定を進めており、今後はアメリカの動きが注目されています。
Googleの課題
GoogleやYahoo!は、ブラウザが保持するクッキー(Cookie)というファイルを使用して、ユーザの行動履歴の追跡や情報収集を行っています。こうやって収集したデータは、ユーザの嗜好に合わせた検索結果の提供やユーザが好む広告を表示する(=Googleの利益の)ために役立てられています。
Googleはどの様にクッキーを活用して、個人情報を収集しているのでしょうか。答えは「追跡型のクッキー」にあります。
クッキーを利用した広告
クッキーの中には、ファーストパーティ・クッキーとサードパーティ・クッキー(追跡型のクッキー)の2種類があります。このうち、サードパーティ・クッキーは、ユーザの行動を追跡し、これまでにアクセスしたサイトに基づき、広告を表示するために使用されています。
最近では、このサードパーティ・クッキーがユーザのプライバシーを侵害しているとして、欧州では一般データ保護法(GDPR)の規制対象となっています。Googleは、こういった規制を回避するため、代替技術(Topics API)の開発を進めています。
ユーザの検索履歴をひたすら収集
GoogleはChromeのキャッシュとは別に、Google内にユーザがアクセスしたウェブサイトの履歴を保管しています。そして、このアクセス履歴を基にして、ユーザの嗜好に合わせた検索結果と広告を表示しています。多くのユーザは、アクセス履歴情報を「勝手に利用」して、自社の利益のために使われていることに反発しています。
ChromeのキャッシュやGoogleサービス内に保管されているアクセス履歴等、それぞれを確認する方法と削除する方法は「検索履歴を残さない!Chromeの設定手順と秘密モードの存在」をご確認ください。凄い量の検索履歴が保存されていることに驚くと思います。
フィルターバブルに陥る罠
Googleは、ユーザの検索履歴は絶えず収集・分析し、ユーザが好む検索結果と広告を表示するために使用されます。
ユーザが好む検索結果を表示する機能=「フィルター」機能のせいで、「泡」(バブル)に包まれた様に、自分が求めている情報しか見えなくなるため、インターネット活動家イーライ・パリサー氏はこの状態を「フィルターバブル」と表現しました。
実際にフィルターバブルが発生した有名な出来事といえば、2016年の米大統領選挙。Facebookは、トランプ支持派にはトランプ支持の投稿しか表示せず、ヒラリー・クリントン支持派にはヒラリー・クリントン支持の投稿しか表示されない事象が発生しました。
DuckDuckGoは、ユーザの好みに検索結果を「合わせない」ため、フィルターバブルの形成を防ぐことができます(ただし、検索精度はGoogleの方が上(涙))。
Googleとは真逆の路線で運営されている「DuckDuckGo」(ダックダックゴー)
繰り返しになりますが、GoogleやYahoo!は、クッキーを使用して、ユーザの行動履歴の追跡や情報収集を行っています。それとは、真逆の方向を進む検索エンジンが「DuckDuckGo」(ダックダックゴー)です。
現在、DuckDuckGoは自社ブラウザを開発中です。2023年2月時点で、Macベータ版は公開されており、Windows版もすぐに公開される予定です。Macベータ版は、他のブラウザの様にChromiumベースではなく、Sarfariのレンダリングエンジンを採用しています。DuckDuckGoブラウザのMacベータ版は、ここからダウンロードできます。
プライバシー保護を最優先
DuckDuckGoは「プライバシー保護を最優先」する検索エンジンです。
プライバシーポリシーでは、個人情報を収集しないことを宣言しています。デフォルトではクッキーすら使用していません。DuckDuckGoの設定により、クッキーを使用する様に変更できます。しかし、クッキーを使用する設定に変更をしても、クッキーには個人を特定する様な情報は入っていません。
スノーデン氏が「PRISM」の存在と政府が個人情報を収集している事実を暴露して以降、GoogleやFacebookといったサービスが、無断で個人情報を勝手に収集することに対して「抵抗」を覚える人は少なくありません。そういった背景により、個人情報を収集しない「DuckDuckGo」の利用者数は増えています。
DuckDuckGo ブラウザの開発にも注力
DuckDuckGoは、前述の通り、ブラウザの開発にも注力しています。Chromiumベースであったり、Firefoxベースのブラウザが多い中、DuckDuckGoは自社で一からプライバシー最優先でブラウザを開発しています(レンダリングは、Microsoft EdgeのWebView2を使用)。速度も快適です。Windows版ブラウザ(ベータ版)は、DuckDuckGoのサイトからダウンロードできます。
DuckDuckGo検索エンジンの実力
DuckDuckGoは、Wikipedia、Microsoft Bing、YandexやDuckDuckBotを含む400種以上の情報源を元に検索結果を表示します。検索結果の精度は、Googleには及ばないもののそれなりの検索結果は表示してくれます。
以下は、後述するDuckDuckGoの1日あたりの検索回数(DuckDuckGoのトラフィックページ)を調べるため、DuckDuckGoを使ってみました…が、必要な情報は得られませんでした(笑)。
DuckDuckGoは、ダークウェブ検索機能も搭載!
ダークウェブとは、GoogleやYahoo!などの検索エンジンを使用しても検索できないサイトです。
ダークウェブの実態は、Torネットワーク内にあるウェブサイトの集合体です。
DuckDuckGoは「ダークウェブを検索できる機能」を備えています。ただ、アクセス方法が少し特殊で、DuckDuckGoをChromeやFirefoxから使用しても、アクセスできません。DuckDuckGoを使用して、ダークウェブにアクセスする詳細は「匿名性重視の「Torブラウザ」ダウンロード~使い方まで」をご確認ください。
1日あたりの検索数の推移
SEO系のニュースでは、Googleの比較対象として、DuckDuckGoが取り上げられることも多くなりました。
1日あたりの検索回数を計算するための情報が両社から発表されています。
この情報を基に、GoogleとDuckDuckGoそれぞれの1日あたりの検索回数を計算したところ、以下の様になりました:
DuckDuckGo | 104,910,079回 |
5,443,200,000回 |
Googleが圧倒的に多いw Googleの検索回数は、1秒あたりの処理件数が63,000件という情報があったため、これを基に算出しています。ただ、DuckDuckGoの検索回数は年々順調に増えており、2021年1月18日には、1日あたりの検索回数が1億回を突破しました。2022年2月は、1日あたり約1億回以上で推移しています。
2022年4月以降は、1日の検索回数が1億回を下回っています。DuckDuckGoは、2022年8月頃に一日当たりの検索回数を報告しなくなったため、現在の1日の検索回数は不明です。
DuckDuckGoとGoogleの比較
DuckDuckGoがプライバシーを最優先していることは説明した通りです。それでは、検索エンジンとして見た場合、どうでしょうか。ここではDuckDuckGoとGoogle、それぞれの特徴や違いを説明します。
ユーザの行動履歴・入力履歴の記録
前述の通り、Googleはクッキーを積極的に使用して、ユーザの行動を追跡し、最適な広告を提供するシステムを構築しています。反対に、DuckDuckGoは、ユーザの行動履歴を追跡する様なことはしません。また、Googleではユーザの入力履歴を記録していますが、DuckDuckGoはユーザが入力した過去の検索クエリを記録していません。
検索結果
前述の通り、Googleは、ユーザの好みに合わせて検索結果ページ(SERP)の内容を変えています。その結果、前述のフィルター・バブルに陥りやすくなります。DuckDuckGoは、ユーザの好みに検索結果を「合わせない」ため、フィルターバブルの形成を防ぐことができます(ただ、現状では前述の通り、検索精度はGoogleの方が上)。
検索結果の確認方法
GoogleもDuckDuckGoも、検索結果ページ(SERP)には、10件の検索結果を表示します。Googleは、次の10件を表示するには「次へ」か「2」を選択します。しかし、DuckDuckGoはスクロールをするだけで、次の10件を表示できます。
DuckDuckGoは、検索結果にAI検索機能「DuckAssist」を追加しました。インスタント回答機能に追加する形で実装しています。詳細は以下AI検索機能「DuckAssist」をご確認ください。
!(Bang)機能
Googleには、トップページに、「I'm Feeling Lucky」というボタンがあります。検索文字列(検索クエリ)を入力して、このボタンを押すと、検索結果の1番目に自動的に遷移します。
!(Bang)機能は、これに似ていて、DuckDuckGoで入力した検索クエリをユーザが指定した検索エンジンで検索します。
例えば、「!gj 東京都」で検索すると、Google Japanで「東京都」を検索した結果のページに移動します。
GoogleもDuckDuckGoも提供している機能
GoogleとDuckDuckGoの両方が提供している機能を説明します。
広告
どちらも、GoogleもDuckDuckGoも検索結果ページの上下に広告を表示しています。
ナレッジパネル
検索結果ページの右側に、ナレッジパネルとして、検索クエリ(検索文字列)に対応した情報を表示します。
インスタント回答
「1+1」の様に、明確な答えが分かるものは、その答えを表示する機能です。
また、どちらの検索エンジンも実際に使用できる「電卓」を併せて表示します。
AI検索できるアツイ機能「DuckAssist」
DuckDuckGoは、2023年3月8日に、AI検索機能「DuckAssist」の実装を発表しました。現在、英語版のDuckDuckGoではこの機能のベータ版を無料で使用できます。
AI検索機能「DuckAssist」は、インスタント回答機能に、機能追加する形で実装されています。ユーザが検索結果のページをクリックしてアクセスしなくても、その場で検索内容への回答を表示できる様になっています。
実際にDuckAssistを使用している様子をgif動画にしましたので、以下をご確認ください:
「ソフトバンクの創業者は誰?」(who is the founder of softbank)を検索すると、DuckAssistが検索結果画面のトップに表示されます。「Ask」ボタンを選択すると、DuckAssistがWikipediaを検索して、回答「孫正義」(Masayoshi Son)を表示してくれます。
この機能があれば、いちいち検索結果にあるサイトリンクを選択して、他のサイトに遷移しなくてもよいので、大変便利ですね!
DuckDuckGoの使い方
ここでは、DuckDuckGoの使い方を説明します。操作方法の大部分は、Googleと変わりません。
Chromeブラウザでの使い方
パソコンやスマホでブラウザを立ち上げて、https://duckduckgo.com/へアクセスすれば、Googleと同じ様に検索できます。
難しいことは何もありません。UIもGoogleと同じ様にシンプルです。
Android
Googleプレイストアから専用のブラウザアプリをダウンロードして、使うことができます。
2022年2月現在、満足度は★4.8つとなっており、高い満足度を誇っていることがわかります。
iPhone
iPhoneでは、設定→Safari→Search Engineからデフォルトのブラウザを選択できる様になっています。
DuckDuckGoは、選択肢の一つとなっています。
余談ですが、一番下のEcosiaは、ドイツ企業が提供している検索エンジンです。名前の通り、80%以上の利益を植林・森林再生活動を行う非営利団体に寄付しているエコな企業です。
プライバシー保護が重要視される時代の検索エンジンは「DuckDuckGo」
プライバシー保護を最優先に掲げるDuckDuckGoは、検索エンジンの中で占めるシェアはまだ低いものの、ジワジワとシェアは上がっています。
特に、クッキーによるユーザ追跡、ユーザ情報の無断利用は、世界中が注目していることから、今後は、Yahoo!やBingを抜いてくる可能性を秘めています。その証拠に、現在でも1日あたりの検索クエリ数は増加しています。ただ、検索精度はGoogleに大きく引き離されているため、ここを改善するとユーザ数はいっきに増えてくると思います。
また、DuckDuckGoは、前述の通り、ダークウェブも検索できます。ダークウェブは怪しくて危ないイメージがありますが、実際は抑圧的な国から安全に海外メディアに情報を提供するための仕組みでもあります。詳細は 「匿名性重視の「Torブラウザ」ダウンロード~使い方まで」をご確認ください。
プライバシーを最優先に考え、インターネットを匿名でアクセスしたい場合は、VPNが有効です。詳細は「インターネットを匿名でアクセスするためには必須!ノーログVPN「NordVPN」を徹底的に解説!」で説明していますので、ご確認ください。
以上です。