ファイブ・アイズ(Five Eyes, 5-eyes)。
UKUSA協定(United Kingdom‐United States of America協定、通称ウクサ協定)に基づく機密情報共有の枠組みの呼称です。ファイブ・アイズの現在の加盟国は、アメリカ、イギリス、オーストラリア、カナダ、ニュージーランドです。
ファイブ・アイズは、国家の枠組みを超えた機密情報共有の枠組みとして、70年以上続いていますが、活動内容が明らかになったのは、ここ10年ほどのこと。具体的な活動内容としては、軍事目的の通信傍受システム「Echelon」(エシュロン)やアメリカのテック企業から個人情報を収集する「Prism」(プリズム)の運用などです。
EchelonやPrismの存在は、都市伝説として語り継がれていました。
Edward Snowden(エドワード・スノーデン)がCIAから入手した情報を暴露するまでは、ファイブ・アイズの加盟国がその存在を公に認めたことはありませんでした。
本記事では、ファイブ・アイズ同盟が結成されるまでの歴史とこれまでの活動を説明します。また、Echelon、Prism、その他の諜報システムに関してもその概要を説明します。
本記事の内容は、NSA公式サイトや各国を代表するメディアの記事より確認しています。参照した文献・記事・サイトは、該当部分にリンクを貼っていますので、詳細はそちらからご確認いただけます(ほぼ英語となります)。
ファイブ・アイズ(Five eyes, 5-eyes)とUKUSA協定
UKUSA協定とは、Signal Intelligence(シグナルインテリジェンス)の協力に関する多国間協定です。シグナルインテリジェンスとは、通信、電磁波、信号等の傍受を利用した諜報活動のことです。Signal Intelligenceは、略して「SIGINT(シギント)」と呼ばれることもあります。
UKUSA協定は、最初にアメリカとイギリスが締結した協定で、後にカナダ、オーストラリア、ニュージーランドが加盟して現在の5カ国構成となりました。UKUSA協定に基づく同盟は、通称ファイブ・アイズと呼ばれています。
UKUSA協定 - すべての始まり
1941年8月14日、アメリカとイギリスにより、Atlantic Charter(大西洋憲章)が発表されました。大西洋憲章は、第二次世界大戦後のアメリカとイギリスの目標を示した声明です。この声明からNATO(北大西洋条約機構)の結成や大英帝国の解体などが実現しました。
UKUSA協定は、大西洋憲章に関連した「非公式の合意」から誕生した秘密条約が基になっています。この秘密条約は、1943年のBRUSA(ブルサ)協定の成立により更新され、1946年3月5日にアメリカとイギリスにより、正式に制定されました。1954年に、呼び名を現在のUKUSA(ウクサ)協定へと改称しています。
その後、1948年にカナダが加盟。1956年にオーストラリアとニュージーランドが加盟し、現在の5カ国体制となりました。
サードパーティとして知られる国(西ドイツ、フィリピンや一部の北欧諸国)は、準加盟国としてUKUSAコミュニティに参加しましたが、ファイブ・アイズ間で自動的に機密情報を共有する仕組みからは除外されています。
ファイブ・アイズ間の機密情報共有の大部分は、超機密性の高いStone Ghost(ストーンゴースト)ネットワークを通して行われます。Stone Ghostネットワークは「西欧諸国で最も厳重に守られた秘密」があるといわれています。
機密情報共有のルールを定めることに加えて、UKUSA協定はアメリカとイギリスの強固で「特別な関係」を正式なものとしました。
UKUSA協定は、秘密協定としてその協定内容はもちろん、存在すらも語られることなく、代々受け継がれてきました。驚くべきことに、ファイブ・アイズの加盟国であるオーストラリアの首相でさえも、1973年まで知ることはありませんでした。また、UKUSA協定の中心的な役割を果たすアメリカのNSA(National Security Agency)という組織も、1975年までアメリカ国民の大半に知られずに運営されていました。
UKUSA協定は、2005年まで公開されることはありませんでした。なお、2010年6月25日に初めてUKUSA協定の全文が公開され、現在ではNSA公式サイトから閲覧できる様になっています。
エドワード・スノーデンによる「国際的監視網の開示・暴露」により、冷戦時の第一世界の同盟国間の機密情報を共有するための基盤が、急速にインターネットに移行していることが分かっています(第一世界とは、民主的で、高い技術水準を持ち、市民の生活水準が高い国々のこと。アメリカ、イギリス、NATO、日本、その同盟国など)。
ファイブ・アイズを構成する国
上述の通り、ファイブ・アイズは、アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドにより構成されています。
アメリカ、イギリスがUKUSA協定を締結後、カナダ(1948年)、オーストラリア(1956年)、ニュージーランド(1956年)が参加して、現在の形となりました。
これら5カ国の共通点は、イギリス帝国の植民地を発祥としている点(アングロサクソン諸国)です。
アメリカ以外は、現在もイギリス連邦構成国となっています。
ファイブ・アイズ(Five Eyes, 5 eyes)という表現は、5カ国間で共有される文書に記載されていた「AUS/CAN/NZ/UK/US EYES ONLY」(オーストラリア/カナダ/ニュージーランド/イギリス/アメリカの目のみに触れることを許可する)という表現からきています。
ファイブ・アイズの活動をその歴史からひもどく
UKUSA協定から誕生した同盟「ファイブ・アイズ」には、70年以上の歴史があります。
ファイブ・アイズの始まりからこれまでの活動を説明します。
起源(1940年~1950年代)
UKUSA協定は、1943年に合意した10ページのBritish-US Communication Intelligence Agreement(英米通信情報協定、通称:BRUSA協定・ブルサ協定)が起源となっています。BRUSA協定では、英国政府通信本部(GCHQ)と米国国家安全保障局(NSA)の信号傍受ネットワークを接続することに合意しています。
UKUSA協定は、1946年3月5日にイギリスのロンドン信号情報委員会のPatrick Marr-Johnson(パトリック・マー・ジョンソン)大佐とアメリカ州陸軍海軍通信情報委員会のHoyt S. Vandenberg(ホイト・ヴァンデンバーグ)中将により署名されました。
当初の合意では、交換する情報は「国益を害する」ものではないと記載されています。しかし、アメリカはイギリス連邦構成国への機密情報の共有をしばしば拒否したといわれています。UKUSA協定の全文は、締結から60年以上経過した2010年6月25日に公開されました。
冷戦(1947年 - 1991年)
UKUSA協定の合意に基づき、GCHQとNSAはソビエト連邦、中華人民共和国、およびいくつかの東側諸国(通称:エグゾティクス)に関する情報の共有を続けました。
冷戦中、アメリカが中心となり、軍事目的の通信傍受システム「エシュロン」が稼働し、ソビエト連邦とその同盟国の軍事・外交情報を監視する様になります(現在、エシュロンは世界中の情報を監視しているといわれています)。
この時代にUKUSA協定に3カ国が参加し、今の形となりました。それぞれカナダ(1948年)、オーストラリア(1956年)、ニュージーランド(1956年)となります。
1955年に協定が更新され、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドが「UKUSAと協力する連邦諸国」として指定されました。その他にも、サードパーティとしてノルウェー(1952年)、デンマーク(1954年)、西ドイツ(1955年)が参加しています。
冷戦中、ファイブ・アイズは多方面で協力します:
- 1950年代:SIS(イギリス)とCIA(アメリカ)は共同で、イランのモハンマド モサデグ首相の転覆を画策
- 1960年代:SIS(イギリス)とCIA(アメリカ)は共同で、コンゴの独立指導者パトリス・ルムンバの暗殺を画策
- 1970年代:ASIS(オーストラリア)とCIA(アメリカ)は共同で、チリのサルバドール アジェンデ大統領打倒を支援
- 1989年 :天安門事件の後、SIS(イギリス)とCIA(アメリカ)はイエローバード作戦に参加。これにより、中国政権から反体制派を救出
Echelon(エシュロン)の存在が公に(1972-2000)
20世紀の終わりまでに、ファイブ・アイズが運営するEchelon(エシュロン)の監視ネットワークは、電話、ファックス、電子メールやその他のデータを含む、膨大な量の個人および商用通信を一掃できるグローバル システムに進化しました。これは、衛星伝送や公衆交換電話網などの通信事業者を傍受することにより行われました。
ファイブ・アイズが情報を収集する方法として、PRISM(プリズム)とUpstream collection(アップストリームコレクション)という2種類があります:
- PRISMは、Google、Apple、Microsoft などの大手テクノロジー企業からユーザー情報を収集
- Upstream collectionは、電話回線やインターネット回線から直接情報を収集
エシュロンの存在が世に知れ渡った時代は、当初エシュロンの存在を隠そうとする動きや解体を試みる動きがありました。
一般市民がエシュロンを知るきっかけとなったのは1972年。元NSA通信アナリストがRamparts誌にNSAが「すべてのソビエト暗号を解読できる」技術を開発したと報告したことがきっかけです。
1988年、Duncan Campbell(ダンカン・キャンベル)はNew Statesman(ニュー・ステーツマン、イギリスの政治文化雑誌)でエシュロンの存在を明らかにしています。彼はエシュロンを「UKUSA協定の産物」と説明しています。
彼のレポート「Somebody's listening」(誰かが聞いている)では、盗聴活動が「国家安全保障」の利益のためだけでなく、アメリカのビジネスの利益のため、企業スパイとして定期的に悪用されていることを詳しく説明しています。しかし、この記事はジャーナリズム界隈以外ではほとんど注目されませんでした。
1996年に、ニュージーランドのジャーナリスト、Nicky Hager(ニッキー・ヘイガー)が書籍「Secret Power - New Zealand's Role in the International Spy Network」の中で、エシュロンを詳細に説明しました。これは、後に1998 年の欧州議会の報告書「政治統制技術の評価」の中で引用されています。
2000年3月16日、欧州議会はファイブ・アイズとエシュロンの解消に乗り出しました。もし、この決議を採択されていた場合、エシュロンは解体されていたといわれています。その3か月後、 エシュロンを調査するため、エシュロンに関する一時的な調査委員会が欧州議会によって設置されました。しかし、フィンランドのEsko Seppanenなどの多くのヨーロッパの政治家によると、これらの調査は欧州委員会によって妨害されてしまった、とのことです。
アメリカでは、議会議員が「エシュロンが米国民の監視に使用される可能性がある」と警告しています。これに関連して、2001年5月14日、米国政府は エシュロンに関する臨時委員会の会合をすべてキャンセル。当時のBBCは「アメリカ政府は依然としてエシュロンの存在すら認めようとしない」と報道しています。
エシュロンの詳細は「エシュロン」 - 全世界監視プログラムの歴史と構成 をご確認ください。
対テロ戦争(2001~)
2001年9月11日にワールドトレードセンターとペンタゴンが受けた攻撃の結果、対テロ戦争の一環として、ファイブ・アイズの偵察能力は大幅に増強。2001年以降、ファイブ・アイズは多岐に渡り活動しています。以下はその一部です:
- イラク戦争の準備期間中、国連兵器査察官Hans Blix(ハンス・ブリックス)の通信を監視
- 英国のエージェントにより、国連事務総長のコフィ・アナンのオフィスを盗聴
- NSAのメモによると、イラクに対する武力行使に賛成票を投じるよう関係する6カ国に圧力をかける「dirty tricks」キャンペーン(不正工作)を展開。その一環として、6カ国の国連代表団の盗聴を強化するファイブ・アイズの計画が詳述されていた
- SISとCIAは、リビアの統治者ムアンマル・カダフィ(ムアンマル・アル=カッザーフィー)大佐と監視パートナーシップを結び、西側でリビアの反体制派をスパイ(また、リビアの使用許可を得た)
- 2020年11月、ファイブ・アイズは、香港で選出された議員の資格を剥奪する中国を批判
また、ファイブ・アイズの活動が知られる様になり、スパイ活動の停止が命じられたケースもあります:
- 2014年3月、国際司法裁判所(ICJ)はオーストラリアに対し、東ティモールでのスパイ活動を停止するよう命令。ファイブ・アイズのメンバにこのような制限が課された最初の事例
2010年以降、ファイブ・アイズは、アメリカ政府の機密版インターネット「Secure Internet Protocol Router Network」、通称SIPRNet(シパーネット)にもアクセスできる様になります。なお、SIPRNetに関しては、HP(ヒューレット・パッカード)社が互換性のある製品を提供していることから、アメリカにおけるSIPRNet関係ベンダの一社ではないかと見られています。
2013年、元NSA請負業者のEdward Snowden(エドワード・スノーデン)により漏洩された文書により、ファイブ・アイズが共同で運営する監視システムが明らかになりました。メディアで報告された一部のプログラムを以下に示します:
- PRISM - GCHQおよびASDと共にNSAによって運営
- XKeyscore - ASDとGCSBからの貢献により、NSAによって運営
- Tempora - NSAからの寄付によりGCHQが運営
- MUSCULAR - GCHQとNSAが運営
- STATEROOM - ASD、CIA、CSE、GCHQ、NSAが運営
上記より、数多くの監視システムがファイブ・アイズにより運営されていることが分かります。
エドワード・スノーデンはロシアに亡命し、2022年9月にロシアのプーチン大統領により、ロシア国籍が付与されています。
中国との競争(2018年~)
2018年12月1日、Huawei(ファーウェイ)の幹部である孟晩舟(Sabrina Meng、サブリナ・メン)は、アメリカでの詐欺および陰謀罪により、バンクーバー国際空港でカナダ当局に逮捕されました。中国はこれに対抗して、カナダ人2名を逮捕。South China Morning Post(サウスチャイナ・モーニング・ポスト)は、中国共産党指導部とファイブ・アイズ同盟の衝突の始まりだと報道しています。
その後の数か月で、アメリカは中国との技術交換に制限を課します。オーストラリアの国会議員とアメリカのマイク・ポンペオ国務長官から促され、イギリスは5Gネットワークでのファーウェイ製品の採用をしないと発表しました。
サウスチャイナ・モーニング・ポストは、これらの出来事を中国は「世界最古の諜報同盟であるファイブ・アイズとの政治戦争」と見なしたと報じています。
ファイブ・アイズの中には、ニュージーランドの様に、中国との対立をよく思っていない国もいます。
2021年4月中旬、ニュージーランドのNanaia Mahuta(ナナイア・マフタ)外相は、ニュージーランドはファイブ・アイズ同盟が中国との関係を決定することを許さず、ファイブ・アイズの権限を拡大することに不快感を覚える、という声明を発表しました。
これに対し、オーストラリア政府は、Wellington(ウェリントン、ニュージーランドの首都)が、「中国の侵略」と戦うためのファイブ・アイズの努力を台無しにしていることに対して、懸念を表明しています。
ニュージーランドのJacinda Ardern(ジャシンダ・アーダーン)首相からもマフタ氏と同様の発言が繰り返されました。アーダーン首相は、ニュージーランドはファイブ・アイズ同盟にすべてを捧げるが、安全保障以外の問題に関しては、ファイブ・アイズを通さずに、直接ニュージーランドが交渉する、と発言しています。
ニュージーランドの一連の対応の評価は、以下の様に、イギリスと中国で分かれています(当然といえば、当然ですが…):
- イギリス:The Telegraph(デイリー・テレグラフ)の防衛担当編集者Con Coughlin(コン・コフリン)と英国保守党議員のBob Seely(ボブ・シーリー)は、ニュージーランドが北京に対して、ファイブ・アイズ共同の取り組みを弱体化させていると批判
- 中国:Global Times(環球時報、グローバル・タイムズ)は、ニュージーランドが国益をファイブ・アイズよりも優先していることを称賛
以降は、中国も警戒を強めます。2021年4月下旬、環球時報により、ファイブ・アイズに関連する国へ行き「リスクがある」と考えられる企業や組織の従業員は、中国国家安全部によって監視されると報じられました。
これらの従業員は、旅行先、会議の議題、および外国人との会合を中国当局への報告が義務付けられました。また、その他のセキュリティ対策として「出発前のスパイ教育」、普段使用している電子機器は自宅に置き、新品を海外に持ち込むこと、などが挙げられました。これらの措置は、中国とファイブ・アイズ間の緊張が高まった時期に行われています。
2021年12月中旬、米国国務長官のAntony Blinken(アントニー・ブリンケン)は、オーストラリア、カナダ、ニュージーランド、英国の外務大臣と共に、中国における野党候補の排除、香港の国家安全法を批判する共同声明を発表。中国は、中英共同宣言に従い、香港における人権と自由を尊重する様に、と主張しました。
これに対し、中国政府は香港の選挙は公正であると主張し、ファイブ・アイズが香港の内政に干渉していると応酬しました。
上記が、ファイブ・アイズの始まりからこれまでにおける主な活動となります。非公式な活動も多いため、これ以外にもファイブ・アイズとして多くの活動に取り組んでいると思われます。
ファイブ・アイズによるえぐい諜報活動
通常、理由なく自国民に対してスパイや諜報活動を行うことは、法律で禁止されています。しかし、エドワード・スノーデンが暴露したファイブ・アイズの文書によると、ファイブ・アイズ同盟国がお互いの市民を意図的にスパイし、収集した情報を共有していることを示しています。
ファイブ・アイズは、自国民の諜報活動は他国が行い、他国から情報をもらうというグレーなことをしています。人権協会NCCL(the National Council for Civil Liberties、リバティ)のディレクターShami Chakrabarti(シャミ・チャクラバーティ)は、ファイブ・アイズは加盟国がお互いに「汚れた仕事を下請け」していると主張しています。
また、エドワード・スノーデンは、ファイブ・アイズを「自国の法律には従わない超国家的諜報機関」と表現しています。
エドワード・スノーデンが暴露した結果、ファイブ・アイズは世界で多くの論争を引き起こしています。以下はその一例です:
- カナダ:2013年後半、カナダ連邦判事の Richard Mosley(リチャード・モズレー)は、CSISがカナダ人の監視を海外のパートナー機関に委託したことを強く非難。51ページにわたる裁判所の判決は、CSISやその他のカナダの連邦機関が、国内の連邦裁判所には秘密にしつつ、世界的な監視網にファイブ・アイズ同盟国を不法に参加させてきたと主張
- ニュージーランド:2014年、ニュージーランドNZSISとGCSBは、ニュージーランド議会から、ファイブ・アイズのメンバから金銭的な寄付を受け取ったか明らかにするよう求められる。両機関はファイブ・アイズの寄付に関連する情報の提供を控え、ファイブ・アイズからの金銭的な寄付があったかの開示を拒否。これに対して、労働党党首のDavid Cunliffe(デービッド・カンリフ)は、国民には知る権利があると主張
- EU(欧州連合):2014年初頭、欧州議会のCommittee on Civil Liberties, Justice and Home Affairs(市民の自由、正義、内政に関する委員会)は、ニュージーランドとカナダの諜報機関がファイブ・アイズの下でNSAと協力しており、積極的にEU市民の個人情報を共有している可能性があることを報告書(草案)として公開。草案(PDF)そのものは欧州議会のWebサイトから確認できます。
エドワード・スノーデンの暴露により、プライバシーを守るため、積極的にTorブラウザやダークウェブを使用して、匿名でインターネットにアクセスする人たちが増えてきました。Torブラウザの詳細に関しては「匿名性重視のTorブラウザ:ダウンロード~使い方まで」をご確認ください。また、ダークウェブの詳細に関しては「ダークウェブの入り方 - 闇のベールに包まれた漆黒エリアへようこそ」で説明していますので、もしよろしければどうぞ。
その他の国際的なインテリジェンス連合
これまでの説明の通り、ファイブ・アイズはアメリカとイギリスにより1946年に設立されて以降、2回拡大した結果、今の形となっています:
- 1948年にはカナダが加盟
- 1956年にはオーストラリアとニュージーランドが加盟
さらに、正式なメンバーではありませんが、ファイブ・アイズと情報を共有する国もあり、それらの国は「サードパーティ・パートナー」と呼ばれています。
ファイブ・アイズは、特定の協定を基に活動を遂行していますが、同様の共有協定とは別に、特定の目的のために協定を交わしている場合もある、とされています。例えば、エドワード・スノーデンは、NSAには同盟を超えて外国と提携するための組織「Foreign Affairs Directorate(外務総局)」が存在する、と主張しています。
ここでは、ファイブ・アイズ同盟以外の国際的な連合を説明します:
Six Eyes(シックス・アイズ):実際にファイブ・アイズ加盟国から提案された体制
シックス・アイズは、提案があったものの実現しなかった同盟となります。シックス・アイズは、ファイブ・アイズにフランスを加える、という案でした。
フランスのニュース「L'Obs」(フランス・オプセルヴァトゥール)によると、2009年にアメリカはフランスに条約への参加を提案し、シックス・アイズ同盟の形成を試みました。当時のフランスのニコラ・サルコジ大統領は「スパイ禁止協定」への署名を含め、フランスが他の加盟国と同じ地位を持つことを要求しましたが、当時のCIA長官とオバマ大統領により拒否されました。NSA長官は承認したとされています。
その結果、フランスが同盟国になることはなく、シックス・アイズは実現しませんでした。しかし、今後の世界情勢により、フランスを含めたシックス・アイズが実現する可能性は多いにあります。
フランス以外も将来、ファイブ・アイズのメンバになる国があるといわれています。例えば、イスラエル、シンガポール、ドイツ、韓国及び、日本など、正式な加盟国ではありませんが、これまでファイブ・アイズに協力している、または協力を続けている国々です。こういった国々は、ファイブ・アイズのメンバになる可能性があります。
なお、ドイツや日本が同盟に加入する話はこれまでにもありました。直近では、2022年に日本がファイブ・アイズへの協力を拡大すると、メディア各社より報道されています。
Five Eyes Plus(ファイブ・アイズ・プラス)
2018年以降、「Five Eyes Plus 3」(ファイブ・アイズ・プラス・スリー)と呼ばれる取り組みを通じて、ファイブ・アイズはフランス、ドイツ、日本と連合を結成し、中国とロシアから生じるサイバー脅威に対抗するための情報共有の枠組みを導入しました。
Nine Eyes(ナイン・アイズ)
Nine Eyes(ナイン・アイズ)は、ファイブ・アイズに加えて、デンマーク、フランス、オランダ、ノルウェーと協力するための同盟です。
Fourteen Eyes(フォーティーン・アイズ)
エドワード・スノーデンが流出させた文書によると、14か国の協定もあるとされています。公式にはSIGINT Seniors Europe(SSEUR)だとされており、通称「14 Eyes(フォーティーン・アイズ)」と呼ばれています。構成国は、ナイン・アイズのメンバーに加えて、ベルギー、ドイツ、イタリア、スペイン、スウェーデンとされています。
エドワード・スノーデンが告発した内容をキーワード別に整理された記事がBBCに掲載されています。更に深くエドワード・スノーデンが告発した内容を知りたい方は、こちらを参照してください。
ファイブ・アイズは今後も活動を続ける
中国・ロシアとファイブ・アイズの対立が激化する中、今後もファイブ・アイズによる監視や盗聴は強化されていくとみられます。電話はもちろん、インターネットで行われる通信の多くは、ファイブ・アイズにより、監視されているとみなして間違いないでしょう。
また、インターネットで商品を購入したり、SNSを通した交流の情報の多くは、ファイブ・アイズに監視されています。こういった監視の目を通り抜けるには、TorブラウザやVPNが有効です。TorブラウザやVPNに関しては、以下記事をご確認ください:
ファイブ・アイズや国家の監視が気になる方は、TorブラウザやVPNを使用して、インターネットのアクセスを匿名化する様にしましょう。
以上です。