
Echelon(エシュロン)とは、ソ連やその同盟国の通信を傍受する目的で開発されたシステムの一部です。現在は、世界中を監視するための仕組みとして、ファイブ・アイズ加盟国により運営されています。
ファイブ・アイズは、オーストラリア、カナダ、ニュージーランド、イギリス、アメリカの5カ国で構成されています。
ジャーナリストDuncan Campbell(ダンカン・キャンベル)は、1988年にNew Statesman(ニュー・ステーツマン、イギリスの政治文化雑誌)でエシュロンの存在を明らかにしています。彼はエシュロンを「UKUSA協定の産物」(英語)と説明しています。
ダンカン・キャンベルは、1976年に初めて英政府通信本部(GCHQ)の盗聴活動に関する記事を書いて以来、40年近くにわたって英国政府の諜報活動について報じ続けている伝説のジャーナリストです。
UKUSA協定やファイブ・アイズの詳細に関しては「ファイブ・アイズ(Five Eyes) - 世界最強のインテリジェンス協定」をご確認ください。
アメリカ政府やNSA(National Security Agency)は、長い間、エシュロンの存在を否定していました。
しかし、2013年に元NSA請負業者のEdward Snowden(エドワード・スノーデン)がNSA内の文書を漏洩。その文書の中で、NSAがエシュロンについて語っています。これはアメリカ政府の公式文書内で初めてエシュロンの記述が確認されたケースとなります。
本記事では、以下3点を主な情報源として、エシュロンについてその詳細を説明します:
- ダンカン・キャンベル氏が関連するインターセプトが発信している情報
- エドワード・スノーデンが流出させた機密情報
- ニューヨーク・タイムズなどの世界的に著名な海外メディアが発信している情報
エシュロンの運営母体とエシュロンが開発された目的

ダンカン・キャンベルは、エシュロンを「UKUSA協定の産物」と説明しています。UKUSA協定とは、第二次世界大戦中にアメリカとイギリスが交わした秘密条約が基になっています。
ここでは、エシュロンの運営母体とエシュロンが開発された目的を説明します。
運営母体:ファイブ・アイズ
UKUSA協定は、アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの5カ国間の秘密協定です。この5カ国は通称ファイブ・アイズと呼ばれています。
UKUSA協定やファイブ・アイズの詳細に関しては「ファイブ・アイズ(Five Eyes) - 世界最強のインテリジェンス協定」をご確認ください。
エシュロンは、UKUSA協定の取り組みから生まれたもので、ファイブ・アイズ各国により、世界各地で稼働しています。
詳細は後述しますが、サードパーティーと呼ばれている、ファイブ・アイズに協力する国にも設置されています。日本でも設置されていたことが確認されています。
エシュロンが開発された目的とFrosting program(フロスティング プログラム)の存在
エシュロンが開発された主な目的は、1964年に設立された国際電気通信衛星機構(INTELSAT)が運営する通信衛星を傍受するためです。
エドワード・スノーデンが流出させたNSAの内部文書によると、エシュロンは、Frosting programのサブプログラムとして描かれています(詳細は後述)。
エシュロンは稼働した後も、機能追加や更新は随時行われました。20世紀の終わりには、エシュロンの機能は当初と比較して、大きく拡張されました。イギリスのThe Guardian(ザ・ガーディアン)紙は、エシュロンを以下の様に表現しています:
「電話、ファックス、コンピューターを傍受できる電子スパイ ステーションのグローバル ネットワーク。銀行口座も追跡できる。情報は、エシュロン内に保存されており、個人に関する何百万もの記録を保持できる」
the guardian記事より一部引用
エシュロンは日本にもあった!場所は青森!
エシュロンは、昔から日本にも設置されているといわれてきました。2013年にエドワード・スノーデンが流出させた文書によると、青森県にある三沢基地にエシュロンが設置されているとの記載があります。
三沢基地は、航空自衛隊の中でも、唯一の日米共同使用の航空作戦基地です。エシュロンが設置されていてもおかしくありませんが、現在はエシュロン関連の設備は撤去されています。
エシュロンの青森の地図
以下は、Wikipediaに掲載されているエシュロンの写真となります。

白い球状のものがエシュロンといわれており、日本以外にも世界中のファイブ・アイズが関連する基地に、同様の形状のものが設置されています。なお、現在のGoogle Mapから現地を確認すると、白い球状は確認できないため、すでに撤去されたものと思われます。
Frosting program(フロスティング プログラム)の全貌
エドワード・スノーデンが流出させたNSAの内部向けニュースレターによると、1966年に、通信衛星が発信する情報を傍受・処理するシステムを構築する計画「FROSTING program(フロスティングプログラム)」が開始。
FROSTINGプログラムは、以下の通り、2つのサブプログラムより構成されており、そのうちの1つがエシュロンとなります:
- Transient(トランジェント)
トランジェントは、ソ連の通信衛星「モルニヤ」が発信する情報を傍受・処理するためのプログラム。モルニヤは、軍事用のコミュニケーションと政府のコミュニケーションのため。ソ連で使用されていた。 - Echelon(エシュロン)
エシュロンは、国際電気通信衛星機構(INTELSAT)が運営する通信衛星の情報を傍受・処理するためのプログラム。INTELSATが運営する通信衛星は、テレビ放映、個人・政府・企業の通信手段として使用されている。
ダンカン・キャンベルは「FROSTINGプログラムとトランジェントが、エシュロンと共存している事実は、エドワード・スノーデンがNSAの機密情報を流出させるまで、誰にも知られることがなかった貴重な情報だ」といっています。
エシュロンの初期の構成
1968年、FROSTINGプログラムの西海岸プロジェクト(コードネーム:JACKKNIFE(ジャックナイフ))が承認され、施設を設立する場所として、Yakima Firing Center(ヤキマファイアリングセンター)が選ばれます。Yakima Firing Centerは、現在、Yakima Training Center(ヤキマトレーニングセンター)と呼ばれています。
その後、1974年10月4日に、当時のヤキマファイアリングセンターで本稼働したエシュロンは以下で構成されていました:
- 直径30メートルのパラボナアンテナ
- マニュアルレシーバー、オートマチックレシーバー、音声復調器、シグナル処理用のサブシステムから構成されるフロントエンドシステム
- 言語解析用バッファ
- コミュニケーションハンドラサブシステム
- コンピュータコントロールサブシステム
- UNIVAC 1108(メインフレーム型コンピュータ)。メッセージ処理システムとしても使用。
当時のエシュロンは「太平洋地域の衛星から電信音声(telegraphy voice)とファクシミリの情報を収集・処理」していました。また、エシュロンが収集した情報は、UNIVAC 1108へと連携され、キーワードによる情報の取捨選択が行われた後、NSAへと転送。NSAでは、受信した情報を更に分析していました。
エシュロンの基地局は、NSA本部から「Terminal Operations Control(ターミナルオペレーションコントロール)」経由で管理されていました。また、基地局の管理には、STARBURST(スターバースト)とOCEANFRONT(オーシャンフロント)という専用のネットワークが使用されていました。

現代のエシュロン
1960年代の構想から始まったエシュロンは、現在も拡張が続けられ、処理能力・分析能力は誰にも想像ができないものになっています。現在では、エシュロンとトランジェントは、FORNSATシステムへと統合され、運用されています。
少なくとも2010年までは、「キーワードによる情報の取捨選択は行われており、XKEYSCOREなどの他システムと連携して、高速に情報を取捨選択できる様になっている」(英語)とエドワード・スノーデンが流出した機密文書に記載されています。
エシュロンの監視の目から逃れる方法

エシュロンは、エドワード・スノーデンがNSAの機密情報を流出した当時も稼働していたことが分かっています。
エシュロンの監視の目をすり抜けることは、自力では不可能といわれています。しかし、誰でも使えるツールの力を借りることにより、監視の目をすり抜けることが可能になります。最後に、エシュロンの監視の目から逃れるツールを紹介して、本記事を終えたいと思います:
Torの使用
アメリカ海軍調査研究所が開発したTorネットワークを通してインターネットへアクセスすると、アクセス元を特定することができません(=監視できません)。
2013年当時、NSAは、Torネットワークを破ることができなかったと、エドワード・スノーデン自身もいっています。
Torネットワークを使用して、インターネットにアクセスするには、Torブラウザを使用します。TorネットワークとTorブラウザに関しては、以下で更に詳しく説明しています:
VPNの使用
VPNを使用すると、VPNサーバからインターネットにアクセスする様になるため、アクセス元の特定ができなくなります。VPNを運営している企業からは、通信内容が読み取れるため、VPNを使用する場合は、信頼のおけるVPNプロバイダを選ぶ様にしてください。
おすすめは、コンシューマVPNでシェアNo.1のNordVPN
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