
こんにちは、ケニーです。
「スーパーの正社員は恥ずかしい」「スーパー就職は恥ずかしい」「スーパー就職は負け組」、そんな声をよく聞きます。
「お給料が安そう」「きつそう」「後悔しそう」、そんなイメージを抱く方が多いと思いますが、そんな考え方は損です。
結論:スーパーの正社員は将来性あり!実際はチャンスだらけです!
小売業向けのソフトウェア開発・ITサービス提供に、20年以上携わってきた僕がその理由を説明します。
「スーパーの正社員は恥ずかしい」「スーパーの就職は恥ずかしい」と思う方は、ぜひご確認ください。
日本のスーパーの実態と未来

戦後、日本の小売業は、アメリカを真似して成長してきたといわれています。
例えば、当初は、女性の生理用品を店内の目立たないところに置いていました。しかし、アメリカでは女性の生理用品も堂々と目立つ場所に設置している。それを見て、日本の小売業は、アメリカ式に堂々としたところに配置する様に、方針転換しました。
また、小売り各社は、世界一のWalmartのEveryday Low Price運営を取り入れています。
そうやって、アメリカの真似さえすれば、日本の小売業も同じく成長できる時代がありました。
しかし、バブル崩壊、eコマースの登場、人口減少などにより、日本の小売業は勝ち組と負け組に別れる様になりました。以前は日本一だったダイエー、存在感のあったマイカルなどは、イオン傘下に入りました。
最近では、四国のフジとマックスバリュ西日本の合併や関西スーパーがエイチ・ツー・オー リテイリング傘下に入ることがニュースとなりました。
スーパーマーケットの実態は「統計・データでみるスーパーマーケット」、「全国スーパーマーケット協会」で詳しく確認できます。ここでは、スーパーの現状をさっと確認できるデータを中心に説明します。
売上は好調
2020年以降はコロナ禍となり、コロナの流行具合がスーパーの売上に直接影響する様になりました。しかし、それでも売り上げは好調な傾向にあります。
経産省の関東経済産業局が発表した2024年8月の百貨店・スーパー販売額速報は8, 249億円と、全店の前年同月比5.3%増と36か月連続で前年同月を上回っています。
以下は2021年と少し古いデータですが、百貨店とスーパーの売上高推移です。2020年以降は微増していることが分かります:

(時事ドットコムニュースの百貨店売上高、コロナ前比2割減 スーパーは2年連続プラス―21年 より引用)
事業環境は厳しい
前述の通り、国内の小売業は勝ち組と負け組に分かれる様になりました。しかし、日本の勝ち組も、アメリカと中国の動きを見ると、IT導入や改革のスピードが「遅い」と言わざるを得ません。
アメリカ
アメリカでは、アマゾンの影響で「経営破綻する小売業」が続出したことから「Death By Amazon」(正式名称は、アマゾン恐怖銘柄指数)という言葉が使われる様になりました。また、アマゾンによる実店舗運営も試験的に始まっていることから、今後、オンラインに力を入れていない小売業は淘汰されるといわれています。
小売業世界一のWalmartも、アマゾンに対する危機感から、GoogleやMicrosoftと相次いで提携しています。
中国
中国では、アリババの創業者ジャック・マーによる「ニューリテール宣言」により、「実店舗運営とオンラインの融合」、「物流の効率化」が更に加速すると予想されています。
中国は、日本と比べて3倍のスピードで小売業が成長しているといわれています。既にQRコードを活用した無人店舗の運営など、日本よりも進んでおり、今後更に先進的な小売業が登場するといわれています。
スーパーとデジタルトランスフォーメーション(DX)
日本の小売業は、イオンとイトーヨーカドーの2強の時代です。両社とも、グループ会社は150社以上あり、売上高は、5兆円を超えています。スーパー業界の動きは、イオンとイトーヨーカドーのグループ会社の動きと連動しているといっても過言ではありません。
アマゾンや楽天などのeコマース勢が勢いを増し、実店舗経営も始める中、お客様に対するスーパーの課題は、DXとAIを通した売上拡大。
特に以下2つといえるでしょう:
- ITを通して、店舗に訪れたお客様の買い物を快適なものにする
- オンラインで欲しい物を好きな時に、買えるようにする
つまり、今後のスーパーの発展は、DXとAIの推進にかかっているのです。
小売業世界一のWalmartは、マイクロソフト社と戦略的パートナーシップを締結し、クラウド化、DXを強力に推進しています。2022年末に登場したChatGPTなどのAIの活用もすでに始まっています。
今の時代に「スーパーで働く」ということは、上記の経営課題をいかにクリアして、スーパーの発展につなげるかを考える、ということです。レジ打ちや接客もスーパー経営においては欠かせないものですが、それらはできて当然。
そういった基礎に加え、スーパーの経営を担いつつ、DXとAIで業務を変革していくことが、今のスーパーの正社員一人一人に求められているといっても過言ではありません。
スーパーの正社員に求められるレベル高すぎw
こういった経営課題に真摯に向き合い、解決する働き方ができれば、スーパーの正社員からスタートし、更にお給料の高いコンサルやSIerを目指すキャリアも「あり」だと思います。
今後10年の変革を支えるのはスーパーの正社員
欧州最大級のグローバルな戦略系コンサルティングファーム「ローランド・ベルガー」社が2024年に発表した「小売ビジネスの未来」というレポートがあります。これによると、今後10年の間で起こりうる未来を以下の7つに分けて予想しています:
- 1.PBがカスタマイズ化する
- 2.店舗オペレーションがメリハリ化する
- 3.Secondhand ECが拡大する
- 4.環境価値の訴求が二極化する
- 5.店舗が健康ハブステーション化する
- 6.モビリティ体験と購買体験が融合する
- 7.リアル店舗がダークストア⇔エンタメの二極化する
詳細は「小売ビジネスの未来」レポートをご確認いただきたいのですが、上記の様に今後10年の間でも、小売業は大きな変革を成し遂げる可能性があります。そして大きな変革を成し遂げるのは、スーパーで働く正社員の方々です。
スーパーの正社員は、日本経済の要であり、常に変革の中心にいる業界です。この業界で働いている方々は、自分たちのことを恥ずかしいと思う必要はありません。
スーパーで働くメリット・デメリット(底辺の仕事?正社員はきつい?)

アメリカや中国が成長していく中、人口減少が確実な日本のスーパーの経営は、より一層難しいものとなるでしょう。スーパーの正社員は恥ずかしいどころか、難易度がより一層高くなっているのです。
そんなスーパーで働くメリットとデメリットを以下に示します:
メリット
シビアな競争環境にありつつも、その中に身を置く価値は十分あります。
スーパーで働くメリットは、以下5つ:
社会に貢献できる
日本人の生活を支えるスーパーは、目に見える形で社会を支えています。
そんなスーパーに働くことで、社会に直接貢献できる実感を得られます。
店内のどこに、何があるか分かっているお客様は少ない。そんなお客様に商品の場所を教えてあげるだけでも、立派な社会貢献です。
スーパーの正社員は「現場の知識」が身につき、「将来性」もある
スーパーの現場で働く最大のメリットは、ずばり現場の知識が身につくこと。
スーパーの現場では、以下の様に管理業務が多くあり、正社員の方はこれらをこなしていく必要があります:
- レジ打ち
- 発注管理
- 仕入管理
- 棚卸・在庫管理
- 商品管理
- パートさんのシフト管理
- 販促管理
- 販売傾向分析
- 防犯
上記の様な管理業務には、ITが導入されていることが多く、ITベンダは現場のノウハウや課題が喉から手がでるほど欲しがっています。
また、上記の管理業務を一通りこなし、一人で店舗運営ができる様になれば、ITベンダやコンサルからも声がかかる様になるでしょう。独立して、自分で店舗経営をすることも可能です。つまり、現場を知っているスーパーの正社員は、将来性ありです。
現場の運営方法や課題を知っている人間は、それだけ世の中のニーズがあるのです。
潰れる可能性は低い
スーパーは、生活の三大要素である「衣食住」のうちの食となります。
一度、地域に根付けば、よほどの競合が現れない限り、潰れることはありません。
また、大手であれば、勤務先の店舗が閉店しても、勤務地が変わるだけです。
最近では、海外展開している小売業も多いため、海外勤務できる可能性もあります(見聞を広め、今後のキャリアに活かすという意味で海外勤務は、一度は経験してもよいと思います)。
スーパーの仕事はきつい→大手はホワイトです
大手は、残業も少なく、働きやすい環境となっています。
これまで手作業が多かった部分も、ITの導入により、効率化が進んでいるので、仕事が終わった後の自分時間も確保できるでしょう。
スーパーの経営が学べる
正社員は、スーパーの経営に直接携わることができます。
上記の様に、現場の管理業務以外にも、スーパーを経営するための以下の業務に取り組むことができます:
- お取引先様(メーカー様や問屋様)との商談
- 新商品の開発
- 新店舗のロケ探し
- マーケティング
- 労務管理
この様な活動は、正社員でないと経験できないため、積極的に吸収した後は、転職するもよし、社内に残るもよしです。キャリアがどちらに向かっても、仕事がなくなることはないでしょう。スーパーで働く人は底辺、という人もいますが、これは間違いだということが分かると思います。
デメリット
スーパーで働くデメリットもあります。
立ち業務が多い→腰が痛い
スーパー店舗内で仕事をする場合、立ち業務(レジ業務、商品の陳列業務)が多くなります。若い方は問題ありませんが、腰に持病を持っている方や30代以上になってくると、しんどく感じるでしょう。しかし、これは、日々の運動やマッサージなどを欠かさない様にすれば、問題ないでしょう。
お給料
小売業の業種別の給与を比較すると、年代で上下するものの、12業種の5~6位に分類されます。
大手スーパーであれば、決してお給料は悪くありませんが、上位のITや金融と比較すると低くなってしまいます。
しかし、上記の通り若いうちに、店舗経営や本社業務の経験を積むことにより、コンサル業やIT業に転職して、大幅に年収を上げることも可能です。現場のノウハウは、コンサル業やIT業からは細部が分からないため、現場を知っている人間は重宝されます。また、お客様からも信頼されやすい傾向にあります。
結論:スーパーの正社員は恥ずかしい→いいえ、将来性ありです。

IT業、コンサル業 などは、現場の業務知識があってなんぼの世界です。
スーパーの現場では、POSレジ、棚卸、勤怠など、あらゆる業務がIT化されていますが、まだまだ効率化できるところはあります。
「業務のIT化」や「ITによる効率化」には、実務を知っている人間が必要です。
しかし、繰り返しになりますが、IT業界にいる人間で「小売業務を現場レベルで分かっている人間」は多くありません。理由は簡単で「新卒からIT業界にずっといるため」です。実際、お客様の課題が分からず、必要なITサービスを実装できないことが多々あります。
現場を知っている人間は、お客様の課題を理解している場合が多く、より適切な解決策や価値を提供できます。
そういった人間は、将来のキャリアの幅が大きく広がります。現在の勤務先に残るもよし、転職するもよし。
恥ずかしいのは、スーパーの正社員でありながら、業務もよくわからず、経営もよく理解しておらず、だらだらと仕事をしている人間です。これは、スーパーに限らず、どの仕事にもいえること。
これからスーパーの正社員枠に応募する方も、今すでにスーパーの正社員の方も、スーパーで働くことによって得られるものに目を向けるとよいと思います。
以上です。