Startpageはオランダのハーグに拠点を置くStartpage B.V.が運営する検索エンジンです。また、Startpage B.V.は、アメリカの上場企業System1の子会社です。
検索エンジンは、Googleが約90%のシェアを維持しており、Startpageのシェアは1%にも満たないといわれています。しかし、それでもStartpageを使う理由があります。それは「利用者の情報をGoogleに渡さずに、Google検索エンジンを利用できるため」です。
Googleの検索エンジンは、利用者の情報を収集することで知られていますが、必要以上にユーザ情報を収集することで世界中から批判されています。しかし、Googleの検索結果の品質は世界一。
そこで、Startpageは、Googleの検索エンジンを使用しつつも、Googleにはユーザ情報を渡さない様にプライバシーに配慮しています。本記事では、Startpageがプライバシーに配慮する背景、Googleの課題、Startpageの使い方など、Startpageの詳細を説明します。
Startpageにはこちらからアクセスできます。今日からStartpageを使用して、ユーザ情報が収集される心配をせずにネットライフを楽しみましょう!
なお、Startpageは最強の匿名ツールTorを搭載したTorブラウザの検索エンジンとしても採用されています。Torブラウザの詳細は「匿名性重視のTorブラウザ:ダウンロード~使い方まで(日本語版)」をご確認ください。
【背景】消費者のプライバシー保護に対する意識の高まり
Startpageを語る上で外せないキーワードは「プライバシー」。ここ約10年の間に起きたプライバシーに関する出来事を説明します。
スノーデンによるPRISMシステムとECHELONシステムの暴露
2013年、アメリカの国家安全保障局(NSA)が運用する、通信傍受や個人情報を収集するためのシステム「PRISM」の存在が公になります。
当時CIAに派遣されていた エドワード・スノーデン氏が大々的にPRISM(プリズム)の存在を暴露し、 GoogleやYahoo!といった大手IT企業が積極的に情報提供を行っていたことから、世界を驚かす仰天ニュースとなります。
彼が公表した情報の中には、都市伝説となっていた通信傍受システム ECHELON(エシュロン)に関する記述も確認できます。これにより、プライバシーに関する問題が身近にあることを世界中の人々が知ります。エシュロンに関する詳細は「エシュロン」 - 全世界監視プログラムの歴史と構成をご確認ください。
プリズムやエシュロンを運営しているファイブ・アイズに関しては「ファイブ・アイズ - 世界最強のインテリジェンス協定」をご確認ください。
なお、スノーデン氏が信頼した匿名化ツール「Tor」を搭載したTorブラウザは、今も開発が続けられています。Torブラウザのデフォルト検索エンジンとして「Startpage」が採用されていることからも、業界からStartpageの匿名性の信頼は厚いといえるでしょう。
Torブラウザの詳細については「匿名性重視のTorブラウザ:ダウンロード~使い方まで(日本語版)」をご確認ください。
プライバシー保護の動きとGAFAM抑制の動き
AppleやGoogleなどによる「プライバシー」情報の扱い方を見てみましょう。
Appleによるプライバシー保護の動き
Appleが公開している「プライバシーの扱いに関するページ」には、個人情報や位置情報が、スマホやタブレットといった端末からアプリや業者に連携されている現状が描かれています。そして、iPhoneではユーザの設定により、アプリや業者に提供できる情報を制限できることも説明しています。
消費者による「個人情報の扱いへの関心の高まり」に、Appleは見事に応えています。
GoogleやFacebookなどGAFAM抑制の動き
しかし、その一方でユーザから収集した情報を「有効に」活用して、利益を上げている企業もいます。
GoogleやFacebookといった企業は、自社サイトのユーザから収集した情報を活用して、ユーザに対して「最適な」広告を提供しています。
彼らは広告から多大な収益を上げているため、積極的に情報を収集し、常に広告の精度を上げる方法を模索しています。そういった彼らの行動は、世界各国から問題視されています。
Googleでは以前からユーザ情報を収集しすぎだという指摘を受けており、それに対応するため、収集した情報の保存期間を18ヵ月に設定しました。このきっかけは、2018年に欧州で施行された一般データ保護規則(GDPR)だといわれています。日経新聞の記事「Google、利用履歴の自動消去を標準に 保存は18カ月」でも取り上げられました。
また、この動きとは別に、世界ではアップルを含めた「GAFAM」に対して「プライバシー保護の懸念や市場占有率を問題視」し、デジタル市場法というものの策定が進んでいます。現在は、主に欧州が策定を進めており、今後はアメリカの動きが注目されています。
現状、アメリカでは特にGoogleをターゲットに、独占禁止法(The Antitrust Laws)に違反したとして、Google本体を解体する動きが見られます。詳細はこちらの日経記事「米司法省、Google分割要求 Chrome売却で独占解消迫る」をご確認ください。今後も、独占禁止法を理由に、GAFAMの解体が進められていく可能性があります。
Googleの課題
GoogleやYahoo!は、ブラウザが保持するクッキー(Cookie)というファイルを使用して、ユーザの行動履歴の追跡や情報収集を行っています。この様に収集したデータは、ユーザの嗜好に合わせた検索結果の提供やユーザが好む広告を表示する(=Googleの利益の)ために役立てられています。
Googleは、サードパーティ製のクッキーの使用を廃止すると宣言していますが、毎年の様に、代替技術の安全性が各国政府から問われ、理由を付けて廃止を延期しています:
- 2020年1月:2年以内に(2022年末までに)サードパーティ製のクッキーを廃止すると表明
- 2021年6月:2023年後半まで計画を延期
- 2022年7月:2024年後半までに段階的に廃止する計画を発表
- 2024年4月:計画を再延期。詳細はこちら
Googleはどの様にクッキーを活用して、ユーザ情報を収集しているのでしょうか。答えは「追跡型のクッキー(サードパーティ・クッキー)」にあります。
クッキーを利用した広告
クッキーの中には、ファーストパーティ・クッキーとサードパーティ・クッキー(追跡型のクッキー)の2種類があります。このうち、サードパーティ・クッキーはユーザの行動を追跡し、これまでにアクセスしたサイトに基づき、広告を表示するために使用されています。
このサードパーティ・クッキーがユーザのプライバシーを侵害しているとして、欧州では一般データ保護法(GDPR)の規制対象となっています。Googleは、こういった規制を回避するため、代替技術(Topics API)の開発を進めていますが、上記のサードパーティ製のクッキー廃止の延期を繰り返していることから、なかなか納得のいく成果を出せていません。
ユーザの検索履歴をひたすら収集
GoogleはChromeのキャッシュとは別に、Google内にユーザがアクセスしたウェブサイトの履歴を保管しています。そして、このアクセス履歴を基にして、ユーザの嗜好に合わせた検索結果と広告を表示しています。多くのユーザは、アクセス履歴情報を「勝手に利用」して、自社の利益のために使われていることに反発しています。
ChromeのキャッシュやGoogleサービス内に保管されているアクセス履歴等、それぞれを確認する方法と削除する方法は「検索履歴を残さない!Chromeの設定手順と秘密モードの存在」をご確認ください。凄い量の検索履歴が保存されていることに驚くと思います。
フィルターバブルに陥る罠
Googleは、ユーザの検索履歴は絶えず収集・分析し、ユーザが好む検索結果と広告を表示するために使用されます。
ユーザが好む検索結果を表示する機能=「フィルター」機能のせいで、「泡」(バブル)に包まれた様に、自分が求めている情報しか見えなくなるため、インターネット活動家イーライ・パリサー氏はこの状態を「フィルターバブル」と表現しました。
実際にフィルターバブルが発生した有名な出来事といえば、2016年の米大統領選挙。Facebookは、トランプ支持派にはトランプ支持の投稿しか表示せず、ヒラリー・クリントン支持派にはヒラリー・クリントン支持の投稿しか表示されない事象が発生しました。
Startpageは、ユーザの好みに検索結果を「合わせない」ため、フィルターバブルの形成を防ぐことができます。
Startpageのライバル「DuckDuckGo」も同様に、フィルターバブルを防ぐことができます。しかし、DuckDuckGoは独自開発の検索エンジンを採用しているため、検索精度はStartpageよりも落ちます。
StartPage - ユーザ情報を収集しない検索エンジン
Startpageの前身であるIxquickは、1998年にDavid Bodnick氏により、アメリカのニューヨーク市に設立されました。その後、2002年にStartpageとしてサービス提供を開始します。Startpageは世界で初めてユーザのプライバシーに配慮した検索エンジンだといわれています。
当時からGoogleなどの大手検索エンジンでは、ユーザの検索履歴やユーザ情報を収集し、広告やマーケティング目的で使用していました。これに対してStartpageは、ユーザのプライバシーを保護するため、検索履歴やユーザ情報を収集せずに、検索できる様にサービス提供を続けています。
Startpageは、Googleの検索結果を使用しながらも、ユーザのプライバシーを保護するために、独自の技術を開発。Startpageはユーザを匿名化するために、ユーザのIPアドレスやCookieなどの情報を削除した上でGoogle検索を行い、その結果を表示します。
これにより、Googleからは誰が、どこから検索をしているのか、正確な情報が取得できなくなり、ユーザ関連の情報は守られる形となります。Startpageは、ユーザのプライバシーを保護するために、以下を配慮しています。
- 検索履歴の保存なし
- ユーザ情報の収集なし
- Cookieの使用なし
- IPアドレスの匿名化
現在、Startpageは、完全匿名でインターネットを検索できるTorブラウザで設定できる検索エンジンの一つに採用されています。Torブラウザの詳細については「匿名性重視のTorブラウザ:ダウンロード~使い方まで(日本語版)」をご確認ください。
ここでは、Startpageの特長について詳しく説明します。
プライバシー保護を最優先
Startpageは、ユーザーのプライバシーを保護するために、厳格なプライバシーポリシーを設定し、遵守しています。この様な活動により、Startpageは世界中で使用されており、ユーザのプライバシーを保護する検索エンジンとして、世界中のユーザから熱く信頼されています。
Startpageのプライバシーポリシーは「Our Privacy Policy」から確認できます。
検索履歴の保存なし
Googleを含め、多くの検索エンジンは、ユーザの検索履歴を残し、広告配信などに活用しています。
しかし、Startpageはプライバシーポリシーに、ユーザの検索履歴を保存しないことを明記しています。Startpageは、広告の配信は行っているものの、ユーザの嗜好に合わせた広告配信は行っていません。
Startpageの広告は、ユーザが検索したキーワードから推測したものを配信します。そのため、キーワードに合致した広告が配信されやすい傾向にあります。
IPアドレスの秘匿化
IPアドレスが個人に紐づくというのは、一種の都市伝説の様なものです。実際には、IPアドレスが個人にひもづくことはないのですが、IPアドレスからどのプロバイダを使用しているかは分かります。
繰り返しになりますが、IPアドレスから個人が特定されることはまずありません。しかし、Startpageではユーザがより安心してサービスを利用できる様に、IPアドレスを収集しないことを明言しています。
また、Startpageは更に踏み込んだ「Anonymous View」機能を提供しています。これはユーザのIPアドレスを隠し、StartpageのIPアドレスを使用してサイトにアクセスする機能です。ご自身のIPアドレスがアクセス先のサイトに知られることが怖い方は、ぜひこの機能もご利用ください(詳細は後述)。
サードパーティクッキーの制限
クッキーには、自サイトの情報を保存するものとユーザの挙動を追跡するサードパーティクッキーというものがあります。ユーザ情報が広告配信などに悪用されるのは、後者のサードパーティクッキーとなります。
さきほども説明した通り、Googleはサードパーティクッキーを廃止しようとしていますが、冒頭で説明した通り、なかなか廃止に至りません。しかし、Startpageは、サードパーティクッキーは使用しないことを名言しています。
匿名でリンク先を閲覧できるAnonymous View
多くのウェブサイトへアクセスすると、IPアドレス以外にも、ユーザを特定するための情報を収集します。これらの情報を収集し、組み合わせることにより、ユーザを識別することをフィンガープリンティングと呼びます。フィンガープリントには指紋という意味があり「ユーザの指紋を採取する」様な活動のため、フィンガープリンティングと命名されました。
フィンガープリンティングとして収集する情報の一例を以下に示します:
- 使用しているブラウザのバージョン
- ユーザのタイムゾーンやユーザが推奨する言語(日本語、英語など)
- システムで使用できる動画または音声コーデックの組み合わせ
- システムにインストールされているフォント
- ブラウザの設定
- コンピュータの画面サイズ、解像度
Startpageでは、フィンガープリンティングを回避する方法として、Anonymous View(匿名ビュー)という機能を提供しています。本機能を使用することにより、Startpageからアクセスするサイトには、フィンガープリンティングに必要な情報は提供せず、匿名で閲覧できる様になります。
具体的には、アクセスしたサイトには、Startpageからアクセスがあったことしか分かりません。本機能は簡単に使用できます。具体的な使用方法に関しては後述します。
広告のターゲティングを行わない(特定のユーザ向けに広告を配信していない)
Googleなどの検索エンジンでは、サードパーティクッキーなどを駆使して、広告をユーザの嗜好に合わせて配信しています。理由は、ユーザの嗜好に合う広告の方がクリック数や収益アップにつながるためです。
しかし、Startpageでは、ユーザのプライバシーを重視するため、サードパーティクッキーなど、個人を特定する技術を使用せずに、広告を配信しています。具体的には、ユーザが入力したキーワードに合致したものを出す傾向にあります。
Googleの検索結果を提供(高品質な検索結果)
Startpageは、Googleの検索エンジンを使用しています。
Startpageは、Google経由で検索する際に、ユーザに関連したIPアドレス・クッキーなどの情報を取り除きます。そのため、Googleからは誰が検索したのかを特定できません。
繰り返しになりますが、DuckDuckGoなどの検索エンジンも同様に、ユーザ情報を収集しない検索エンジンとして有名ですが、検索エンジンの品質はGoogleよりも劣ります。
しかし、Startpageであれば、Googleと同じ品質で検索結果を表示します。ユーザ情報を収集されたくないけど、検索結果は品質のよいものが欲しいユーザにとっては理想的な検索エンジンといえるでしょう。
また、当然ながら利用料は一切かかりません。
ユーザーフレンドリーなインターフェース
Startpageに限らず、検索エンジンの画面やユーザインターフェイスは、シンプルな構成となっています。Startpageの検索画面も、同じくとても、シンプルで直感的にわかる様なインターフェイスとなっています。
シンプルな画面で、検索に集中できる様な画面になっているため、誰が使用しても分かりやすい様にできています。また、Anonymous Viewも検索結果からワンクリックで使えるため、使いやすい検索エンジンといえるでしょう。
StartPageの使い方
ここからは、Startpageの使い方を説明します。
Startpageは、シンプルなデザインで構成されているため、使い方にはすぐ慣れるでしょう。匿名検索(Anonymous View)など、Googleにはない機能も備えているため、それらを含めて説明します。
通常の使い方
最も簡単な使い方は、ブラウザからstartpage.comにアクセスし「検索したい文字列を入力→検索」です。
検索結果ページは、Googleのそれとほぼ同じで操作に困ることはありません。
Startpageトップページ
Startpage検索結果ページ
Hide promotional messaging
startpage.comにアクセスした際に、画面右下に「Hide promotional messaging」という設定があります。
この設定がONになっていると、Startpage の検索結果ページ上に表示される広告やサービスの宣伝が非表示となります。注意いただきたいのは、この設定は「Startpage の自社サービスやその告知のみを非表示とする」だけで、他の広告はまだ表示されます。
少しでもstartpageの検索結果から広告を削除したい場合にOFFにするとよいでしょう。デフォルトでは無効になっています。
匿名検索(Anonymous View)の使い方
Startpage検索結果のサイト毎に「Visit in Anonymous View」という項目が表示されています。これは、該当のサイトにVPNでアクセスする様に、アクセス元を分からなくする機能です。
「Visit in Anonymous View」の機能により、ウェブサイト側で行われる「個人の行動を追跡する活動」を阻止します。具体的には、ウェブサイト側で行われる以下の活動からユーザを守ります:
- クッキーやトラッカーによるユーザ行動の追跡(ユーザの行動を追跡するソフトウェア)
- FacebookやTwitterなどのソーシャルメディアによるユーザ行動の追跡
- website fingerprinting(ウェブサイトのフィンガープリンティング)
- アクセス元のロケを使用した商品の価格設定
Startpage検索結果のAnonymous View(匿名検索)を選択すると、以下の様に画面上部に「Anonyous View」と表示され、Anonymous Viewモード(匿名検索モード)でウェブサイトを閲覧できます。これにより、アクセスしたサイトが、フィンガープリンティングでユーザ情報を収集することを防ぎます。
Anonymous Viewモードでウェブサイトにアクセスしている間は、ウェブサイトからはStartpageからアクセスされていることしか分かりません。しかし、Anonymous Viewモードでも、GoogleやYahoo!Japanにログインすると、行動履歴がGoogleやYahoo!Japanに分かってしまいます。Anonymous Viewモードでは、どこにもログインしない様にしましょう。
Startpageはスマホ用ブラウザも提供
Startpageは、AndroidとiPhone用のブラウザも提供しています。
使用方法は、Startpage.comと同じです。現在は英語版のみの提供となりますが、サイトの検索スピードも十分早いので、ぜひお試しください。またブラウザアプリとして提供されているため、色々と設定変更してみると思います。
プライバシーを重視した検索エンジンならStartpage!
StartPageは、プライバシーを重視した検索エンジンとして、多くのユーザーに支持されています。その証拠に、インターネット上のプライバシーや匿名性を大切にしているTorブラウザから選択できる検索エンジンとしても採用されています。
またアクセス元の痕跡を残さないことも大きな特長といえるでしょう。
しかし、Startpageは、Startpage経由でアクセスしたサイトに対してはユーザを保護してくれますが、それ以外の通信では、ユーザを保護できません。そんな時は、VPNを使用してブラウザ以外の通信もすべて匿名化するとよいでしょう。
VPNのおすすめはNordVPN(ノードVPN)です。無料期間もありますので、Startpage、Torブラウザと併せて使っていただきたい匿名化ツールです。
NordVPN(ノードVPN)については「NordVPNを徹底的に解説!」をご確認ください。
こういったツールを組み合わせて、インターネット上のプライバシーを保護しつつ、快適なネットライフを送りましょう。
以上です。